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ルサールカとは?スラヴ伝承に登場する水の精を解説【メメントモリ資料集】

『メメントモリ』には、「【天泣の魔女】ルサールカ」というキャラクターが登場します。ルサールカは湖の底で100年間眠っていた少女として描かれていますが、実は「ルサールカ(Rusalka)」という名前は、スラヴ地方の伝承に登場する水の精として知られています。

この記事では『メメントモリ』の設定を考えるための資料として、現実の伝承におけるルサールカがどのような存在なのかを紹介します。

ルサールカとは?

ルサールカは、東スラヴを中心とする民間伝承に登場する女性の精霊です。特にロシア・ウクライナ・ベラルーシなどでは水と深く結び付いた存在として語られ、日本では「水の精」や「水妖」などと訳されることがあります。

ウクライナの伝承では、長い髪を持つ美しい少女の姿で現れ、溺死した少女や洗礼を受けずに亡くなった子どもの魂とされる例があります。また、川の底に住み、春になると水辺や森、野原へ現れて歌ったり踊ったりすると考えられていました。ウクライナ百科事典

「ルサールカ(Rusalka)」という名称は、水を意味する言葉から生まれたようにも見えますが、現在広く受け入れられている語源説では、春から初夏に行われた祭礼「ルサーリヤ/ルサーリア(Rusalia)」に由来するとされています。さらにRusaliaは、中世ギリシャ語を経て、古代ローマのバラの祭礼「Rosalia」にさかのぼると考えられています。

この祭礼はスラヴ圏に取り入れられる過程で、死者の霊や豊穣、春から初夏の農耕儀礼などと結び付いていきました。ウクライナでは、若者が野原や水辺で歌や踊りを楽しんだほか、ルサールカに扮したり、「ルサールカの歌」を歌ったりする習俗も伝えられています。ウクライナ百科事典

そのため、「ルサールカ」という言葉には、水の精というイメージだけでなく、季節の祭礼や死者、豊穣といった文化的背景も重なっています。

若くして亡くなった女性の霊とされることも

ルサールカは、伝承のなかで不幸な死を遂げた若い女性の霊として描かれることがあります。

東京大学スラヴ語スラヴ文学研究室に掲載されている講演記録では、東スラヴの民間信仰におけるルサールカについて、叶わなかった恋に絶望して身投げした未婚女性の霊とされる例が紹介されています。ロシア文学における(水の精)の役割(東京大学)

さらに同記録では、ルサールカには「深い悲しみを背負った美しい犠牲者」という姿と、「男性を誘惑して死へ導く危険な復讐者」という、相反する二つのイメージがあることも指摘されています。こうした二面性は、19~20世紀のロシア文学でもさまざまな形で描かれてきました。

一方、ルサールカに関する伝承は地域によって異なります。ウクライナの伝承では溺死した少女だけでなく、洗礼を受けずに亡くなった子どもの魂とされる例もあり、「ルサールカ=溺死した未婚女性」と一つの定義だけで捉えることはできません。ウクライナ百科事典

美しい女性の姿で水辺に現れる

ルサールカは、長い髪を持つ美しい若い女性として描かれることが多い存在です。ウクライナの伝承では川の底に暮らし、春になると水辺へ現れ、夜になると川岸で遊んだり、木の枝に揺られたり、野原を走ったりしながら歌や踊りを楽しむと考えられていました。ウクライナ百科事典

しかし、人間にとって無害な存在とは限りません。歌や魅力によって男性、とりわけ未婚の男性を誘い寄せ、くすぐって死なせるという伝承も残されています。ウクライナ百科事典

美しい少女の姿を持ちながら、人間を死へ導くこともある――。こうした美しさと危険性の同居も、ルサールカを特徴づける要素の一つです。

ルサールカは恐ろしいだけの存在ではない

ルサールカには人間へ危害を加える恐ろしい側面がありますが、一方で植物の成長や豊穣とも結び付いています。

ウクライナの伝承では、ルサールカたちが野原で踊ることでライ麦の成長が促されると考えられていました。また、ルサールカと深く関係する春から初夏の祭礼「Rosalia」も、豊作を願う農耕儀礼としての性格を持っていました。ウクライナ百科事典

ルサールカの歌にも農耕との関係が見られます。豊かな収穫を願う古い呪術的な歌に由来するとされるものがあり、祭礼では花や木の葉を身につけた少女たちが歌いながら村や野原を巡る風習も伝えられています。ウクライナ百科事典

このようにルサールカには、

  • 水辺に現れる女性の精霊
  • 不幸な死を遂げた女性や子どもの魂
  • 美しい姿で人間を誘惑する危険な存在
  • 植物の成長や豊穣と結び付く存在
  • 春から初夏の祭礼や死者の記憶と関係する存在

といった、さまざまな側面があります。

ロシア文学にも登場するルサールカ

ルサールカは民間伝承だけでなく、19世紀以降のロシア文学にもたびたび登場します。

プーシキンやゴーゴリ、ナボコフなど、多くの作家がルサールカのイメージを作品へ取り入れました。特に、深い悲しみを抱えた女性人間を誘惑する危険な存在という二面性は、文学作品でも重要なモチーフとして使われています。

メメントモリのルサールカを見るための資料として

『メメントモリ』の【天泣の魔女】ルサールカも、

  • 湖の底で100年間眠っていた
  • 信じた人物に裏切られた
  • 生贄にされた過去を持つ
  • 彼女の涙が100年間降り続く雨となっている

という、水や悲劇と深く結び付いたキャラクターとして描かれています。

ただし、ゲーム公式から「スラヴ伝承のルサールカをこのように再現した」と具体的に説明されているわけではありません。

そのため、伝承とキャラクター設定をそのまま一対一で対応させる必要はないでしょう。

それでも、水辺に現れる女性悲しい死や過去美しさと危険性水・雨・生命との関係といった、伝承上のルサールカが持ってきたイメージを知っておくと、『メメントモリ』のルサールカを見るときにも新しい視点が増えるかもしれません。

キャラクター本人の設定や声優、ラメント、スキルについては、【天泣の魔女】ルサールカのキャラクター紹介記事でまとめています。

参考資料