アムレートとは?『ハムレット』の原型になったデンマーク伝承の王子を解説【メメントモリ資料集】
『メメントモリ』には、ヴァイド王国の若き女王「アムレート」が登場します。少し特徴的な「アムレート」という名前ですが、実はヨーロッパにはアムレート(Amleth)と呼ばれる伝承上の人物が存在します。
さらに、このアムレートの物語は、ウィリアム・シェイクスピアの名作『ハムレット』につながる物語の源流としても知られています。
この記事では『メメントモリ』のアムレートを見るための資料として、伝承に登場するアムレートとはどのような人物なのか、『ハムレット』へどのようにつながっていったのかを紹介します。
アムレートとは?ハムレットとの関係は?
アムレートは、中世デンマークに伝わる物語に登場する王子です。現在ではシェイクスピアの『ハムレット』のほうが有名ですが、その物語の源流をたどると、このアムレートに行き着きます。
シェイクスピア作品の上演で知られるイギリスの劇団であるRoyal Shakespeare Companyによると、アムレートの物語が文献に残されたのは12世紀のこと。デンマークの学者サクソ・グラマティクス(Saxo Grammaticus)が、歴史書『Historia Danica』の中にその物語を記録しています。
その後、16世紀にはフランスの作家フランソワ・ド・ベルフォレによって悲劇物語集『Histoires Tragiques』に収録され、さらにこの物語をもとにしたと考えられる先行劇を経て、シェイクスピアの『ハムレット』へとつながっていきます。
メメントモリのアムレート本人については、メメントモリのアムレート キャラクター紹介記事で詳しく紹介しています。
アムレートの物語の内容
アムレートの物語は、父を殺した叔父への復讐を目指す王子の物語です。物語は、アムレートの父が自身の兄弟、つまりアムレートの叔父によって殺されるところから始まります。父を殺した叔父はその後アムレートの母と結婚し、アムレートは父の仇でもある人物の支配下で生きることになります。
次に命を狙われるのは自分かもしれません。そこでアムレートは、あえて狂気を装い、自分が叔父にとって脅威ではないと思わせながら身を守ります。叔父はアムレートが本当に正気を失っているのか何度も確かめようとしますが、アムレートはその企みを切り抜けていきます。
やがてアムレートはイングランドへ送られますが、そこでも自分を陥れようとする企みをかわし、最終的にはデンマークへ戻って父を殺した叔父への復讐を果たします。
こうした「父を叔父に殺される」「叔父が母と結婚する」「主人公が狂気を装う」「父の復讐を目指す」という物語の骨格は、後のシェイクスピア『ハムレット』にも受け継がれました。
アムレートの物語が『ハムレット』へつながる
サクソ・グラマティクスが記したアムレートの物語は、そのままシェイクスピアの『ハムレット』になったわけではありません。
まず16世紀になると、フランスの作家フランソワ・ド・ベルフォレ(François de Belleforest)がアムレートの物語を『Histoires Tragiques』に収録します。
その後、同じ物語をもとにしたと考えられる『ハムレット』の先行劇――現在では一般に「Ur-Hamlet(原ハムレット)」と呼ばれる作品――が16世紀末のイングランドで上演されます。
大まかに整理すると、
北欧に伝わる物語
↓
サクソ・グラマティクスのアムレート
↓
ベルフォレのフランス語版
↓
原ハムレット
↓
シェイクスピア『ハムレット』
という流れで、長い時間をかけながら物語が姿を変えていったことになります。
アムレートとハムレットは同じ人物?
アムレートとシェイクスピアのハムレットには、非常によく似た部分があります。
- 父を叔父に殺される
- 叔父が母と結婚する
- 狂気を装う
- 父の復讐を目指す
一方で、人物としての印象はかなり異なります。
伝承上のアムレートは、自らの身を守るため意図的に狂人を演じ、叔父の罠を回避しながら着実に復讐を進めていきます。
対してシェイクスピアの『ハムレット』では、主人公の内面的な葛藤が大きく掘り下げられました。同じ物語の骨格を持ちながら、時代を経て主人公の描かれ方が大きく変わっていったわけです。
オフィーリアはアムレートの物語に登場する?
結論からいうと「オフィーリア」という名前の人物は、サクソ・グラマティクスが記したアムレートの物語には登場しません。現在よく知られているオフィーリアは、シェイクスピアの『ハムレット』に登場する人物です。
ただし、アムレートから『ハムレット』へ物語が発展していく過程を見ると、オフィーリアにつながるような人物の存在を確認できます。
サクソの物語をもとにフランソワ・ド・ベルフォレがまとめた『Histoires Tragiques』には、アムレートが本当に狂っているのかを確かめるため、若い女性を近づけて誘惑させようとする場面があります。この女性には名前がなく、後のオフィーリアと設定も同じではありません。Internet Shakespeare Editions
シェイクスピアの『ハムレット』になると、この女性にオフィーリア(Ophelia)という名前が与えられ、王の側近ポローニアスの娘、レアティーズの妹、そしてハムレットと恋愛関係にある女性として大きく役割が広げられました。作中では、ハムレットの狂気の原因を探るために利用されるという、古い物語を思わせる展開も残されています。Internet Shakespeare Editions
メメントモリのアムレートを見るための資料として
『メメントモリ』のアムレートは、ヴァイド王国の若き女王として登場します。もともとは王位に就くつもりではありませんでしたが、長く続いた王位争いを終わらせるために「断罪の剣」を手にし、自ら王となりました。
さらに彼女は、自分自身がいつか暴君となる可能性を恐れ、幼馴染で近衛騎士でもあるオフィーリアと互いの剣を交換しています。
また、「オフィーリア」という名前もシェイクスピアの『ハムレット』に登場するヒロインと共通しています。ただし、『メメントモリ』公式から「アムレートやオフィーリアは『ハムレット』をこのように再現したキャラクターである」と具体的な対応関係が説明されているわけではありません。
それでも、王位、暴君への警戒、家族や近しい人物との関係、剣と復讐、アムレートとオフィーリアという名前といった要素を見ながら、古いアムレートの伝承や『ハムレット』について知っておくと、『メメントモリ』の二人を見るための材料が一つ増えます。
キャラクター本人については、メメントモリのアムレート キャラクター紹介記事で詳しく紹介しています。